まだ知られていないプロダクトを世界へ | 私たちのこと vol.7


生活工芸品は海外から見つけにくい

 

社会のグローバル化と情報化が進み、今や世界のどんな場所の情報も物も容易に得られるようになりました。そんな時代にありながら、日本には、まだ海外では知られていない素晴らしい物語をもった素材やプロダクトが多数あります。
日本は手仕事で作られたものを一般の人が生活のなかで使う「生活工芸」の文化が、先進国では珍しく色濃く残る国であるとお伝えしました。そうした生活工芸品は基本的に“顔が見える”範囲で普及しているため、大量生産の工業製品に比べて、海外から見つけるハードルが高いのです。
Simply Nativeではそうしたものに日頃から目を向けながら、店舗や商談を通じてお客様にご紹介したり、オリジナルプロダクトを作ったりしています。その一部をご紹介します。

 

歴史、風土、心遣いが感じられるもの

 

店舗で人気があり、私自身の思い入れも強いのが、京都の柳桜園茶舗さんの抹茶です。
茶道三千家の家元御用達の抹茶も扱っておられる1875年創業の日本茶専門店。抹茶は店の奥にある茶臼で挽き、店頭で量り売りをする創業当時と変わらないスタイルで抹茶を販売しており、また温度管理も徹底されているため、いつでも挽きたてで美味しい抹茶が購入できます。加えて、商品を選んでいると丁寧に説明をしてくださったり、「いかがですか?」とお茶を出してくれることも。そうした血の通った接客に触れるたびに、柳桜園さんがウェブサイトをもたず、自らの店舗と京都の百貨店でしか商品を販売していない理由も理解できるのです。
Simply Nativeでの取り扱いをご相談したところ、大量生産ができないので少量になってしまうけど小さく長いお付き合いができたら、とお返事をいただけて。それは私他たちが求めていることでもあったので、とても嬉しかったのを覚えています。サリーヒルズの店舗のオープン時には、日本語と英語で店頭用のポップを作ってくださり商品と一緒に送ってくださいました。
柳桜園さんの歴史や私たちとの経緯を、Simply Nativeのお客様に説明すると、「京都の老舗ならではの長く続く秘訣ね」と皆さん感心されます。




柳桜園茶舗さんの店頭

同じく京都のプロダクトで、Simply Nativeで販売させていただいているのが香老舗 薫玉堂さんのお香です。1594年の創業より430年以上に渡り、天然素材だけを用いる伝統的な調香技術を現代に伝えています。
誰もが感激されるのが、特定の場所の風土や季節に着想を得て香りが作られていること。例えば「醍醐の桜」や「音羽の滝」と名付けられた線香。
パッケージを開ける前から、実際にお香を焚いた時、またその余韻まで、何度も味わうことができます。桜や滝といった自然物を愛でたり、それらを香りで表し身につけようとしたり。古来の日本人と自然との関わりが感じられる商品です。

 

知識欲をくすぐるブランディング

日本の商品を、海外ニーズに合わせてブランディングし、オリジナルプロダクトを作ることもあります。オーストラリア人に好まれる香り、色、味わいなどを厳選するのはもちろん、シンプルで伝わりやすく、かつ知識欲をくすぐるようなネーミングにもこだわっています。

代表的なのが、日本古来のお茶を海外の人向けにした「Native Tea Collection」というシリーズ。例えば、茶道ではお釈迦様の誕生月(4月)のお茶事で振る舞う甘茶を、私たちの店舗では「Buddha Tea」という名前をつけました。
また、福島県の猪苗代湖に自生する菱という水草の種を乾燥・焙煎させて作った、いなびし茶というお茶もあります。これについては、菱は忍者が逃げる時に地面に撒いたマキビシの原型だったということから「Ninja Tea」として販売しています。



Ninja Tea

お茶と同様に、オリジナルのお菓子も人気です。
京都の局屋さんという和菓子屋には、オーストラリアに原生する草花を象った和三盆の干菓子を作っていただきました。干菓子の型屋さんにお願いして、1年以上かけて木型から作っていただいたものです。




オーストラリアの花バンクシアを型取った干菓子


店舗の一周年の際には、オーストラリアへの感謝を込めて、オーストラリアを象徴するアイコンをデザインした組み飴を名古屋の老舗飴屋さんと共同で開発しました。




くみ飴


このように2国間の橋渡しになれるようなオリジナルプロダクトの開発は、今後も積極的に行っていきたいです。

 

手をかける暮らし、の良い塩梅

 

Simply Nativeのお客さんは、職人が作った生活工芸品を長く大切に使う、といったことに共感してくださる方ばかりですが、それでも私たちは、手間のかかり具合には注意しています。
例えば、日本の包丁は格好良いけどメンテナンスのいらないステンレス製が良いという方が、私たちのお客様の大半です。本格的なものを持ちたいけれど、錆びを防ぐための管理や定期的に砥石で研ぐことにはハードルを感じる。また、陶器の場合は食洗機可のものだと嬉しい、という声があります。
この国ではこだわりの器は、やはり友達を大勢呼ぶホームパーティで使われることが多いので、それらを全て手洗いするのは負担感が大きい、という考えです。
そうしたお客さんの話を汲み取りながら、こだわりはあるが手間はかかりすぎない、という良い塩梅を探るのはなかなか難しいのですが、
作り手と使い手を繋ぐ私たちとしてはとても大切な部分だったりします。

Text & Edit by Yu Ikeo

 

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