創業から8年が経って | 私たちのこと Vol.1

こんにちは。Simply Native代表の松元由紀乃です。2016年にSimply Native(以下SN)がスタートしてから、8年が経ちました。昨年は当初からの夢だったフラグシップストアをオープンするなど、新たな展開を迎えています。このタイミングで、立ち上げから現在までを振り返りつつ、活動の根底にある想いを新たに見つめ直しました。その内容を、今回より8回にわけてお伝えします。

 

Simply Native Yukino Matsumoto

 

日本の生活工芸品を海外に伝える文化商社です

 

私たちは日本の生活工芸品を通じて、そこに宿る「職人性」を世界に伝える文化商社です。具体的には、オーストラリア(シドニー)と日本(千葉、京都、奄美大島)に拠点をもち、建築に使う内外装材から、食器や調理器具、食品や調味料まで、さまざまな日本のプロダクトを海外向けに販売しています。2016年に1つの商品から始まった事業ですが、現在はSKUでいうと2000以上の商品を扱っています。これまでに、87以上の日本の事業者さんの初めての海外進出のお手伝いをさせていただきました。

 

暮らしのなかにある生活工芸品

 

日本には、伝統工芸品や地場産業商材と呼ばれるものが多くありますが、SNで扱う商品は、それらをまるめて生活工芸品と呼んでいます。私たちが大事にしているのは、鑑賞の対象である美術品のようなものではなく、暮らしのなかに取り入れ、実際に使うことではじめて、その価値が輝きだすようなものたちです。作り手の手から、また自然と地続きになった暮らしから、“作る”というより “生まれる”という方がふさわしい。そうしたものには、「職人性」が宿っていると私たちは考えます。使い手はそうしたものを介して、作り手とつながることができ、またものの見方やひいては生活そのものが変わることもあるかもしれません。私たちはそうしたもののなかから、まだ世界に知られていないプロダクトを発掘したり、海外の方に届きやすいように商品化をして、オーストラリアをはじめ世界に届けています。

 

日本の伝統を意識した空間作りのお手伝い

 

SNではそうした商品を、卸(BtoB)と小売(BtoC)の両軸で届けています。1つ目の卸売業では、主に壁紙用の和紙やパーテーション用の組子細工などの内外装材を、デザイン事務所や工務店向けに提案・販売しています。それらは商業物件や一般住居に使われますが、なかでも飲食店を新しく作る際は、全体的なコーディネイトをさせていただくことも多いです。その場合は、内外装材のみならず、食器、食材など、多岐にわたる商品を提案・販売し、時には店舗のコンセプト作りから伴走します。これまでに70以上の案件に携わってきました。ここ数年、オーストラリアの建築シーンではSustainable material(環境に負荷のない素材)であるかどうかが重視されており、そこに合致するものとして、日本の伝統的な素材やその根底にある伝統的な衣食住に価値を見出す人が増えています。

 

 

日本文化のショールームとしての店舗

 

2つ目の小売業では、一般のお客様向けに生活工芸品を販売したり、商品に紐づくワークショップを開催しています。拠点となるのが、シドニーの中心地・サリーヒルズに構えるフラッグシップストアです。日本の伝統的な居住空間を意識しながら、私たちが扱うプロダクトをふんだんに盛り込んだ空間は、ショールームの役割ももたせています。個人のお客様はもちろん、法人のお客様にとっても、商品選びのインスピレーションを得られる空間になっています。

 

 

大事なのは息の長いお付き合い

 

私は奄美大島で、大島紬の修復を手掛ける家に生まれました。父をはじめ、職人さんの姿を間近に育ちました。大学卒業後は経産省の中小企業支援機関に入構し、日本のものづくりやサービスを海外に紹介する部署で、全国の中小企業さんの海外進出のお手伝いをさせていただきました。

 

 

海外で流行を発信する大規模展示会に出展して商品紹介をする機会が多かったのですが、そうした大規模な展示会では、なによりも価格が優先され、私が大事にしたい作り手の人となりや制作過程といった背景は重視されていませんでした。バイヤーに価格が高いと言われ続け、自分の商品に対して自信を失っている作り手を目にする度に、私自身、日本が、そして日本のものづくりに関わる人々が、否定されているような悲しい気持ちになりました。さらには、そうしたバイヤーの反応を受け、多くの作り手は「成約」という成果を得るために、大幅な値引きをし、利益の出ない価格で販売することを余儀なくされていたのです。このような状況を見ていて、行政職員の立場がもどかしく、私自身が海外への直接の繋ぎ手になることで目の前の作り手を幸せにできるような存在になりたい、と思うようになりました。こうして私は、私の理想とする作り手との関わり方を実現しました。小さな会社ですので、一度に多くの方々とはお付き合いできません。ですが、1人1人の作り手さんと顔の見えるやりとりをすることや、息の長いお付き合いができることを大事にしています。スタートから8年経った今もその考えは変わりません。

 

Edit & text : Ikeo Yu

Back to blog